マニア以外向け。鉄道を有効利用しましょう。その4『JRの4種類の設定運賃の話』

某Webサイトでこういう質問がありました。

西船橋⇒八街を普段利用してますが、このまえ用事があって千葉駅で下車しました。
あとで計算したのですが、
西船橋⇒八街:820円
西船橋⇒千葉:290円
千葉-八街:480円
千葉で途中下車すると合計が770円となって50円安くなります。
普通は通しで購入したほうが安いと思います。

さて、実際に計算すると確かに千葉駅で降りたほうが安くなります。
これはなぜなのでしょうか?
今回の珍妙な現象は前に説明した特定区間運賃ではなく、運賃の上昇変化がちがうことと、近郊区間の運賃段階の違いから起こる珍妙な現象です。
では、これはどういうことなのでしょう。

JRに存在する複数の運賃体系
本州3社のJRには大きく分けて4種類の運賃体系があることはご存知でしょうか?
じつはこの運賃体系の違いが今回の現象に一役買っています。
・4種類の運賃体系とは?
下記の4種類の運賃体系が存在します

1)東京山手線(大阪環状線)区間内運賃
2)電車特定区間運賃
3)幹線運賃
4)地方交通線運賃

この4種類が存在し、1⇒4に向うにつれて、運賃の単価が高くなります。
また、1⇒4に向うにつれて地方に特化した運賃体系になっています。
・東京山手線内(大阪環状線内)運賃
名前のとおり、山手線と大阪環状線の内側だけを利用する場合の運賃です。
一番安い運賃設定ですが、範囲は非常に狭い範囲です。
電車特定区間運賃
東京と大阪に設けられている区間で、下記の図が設定範囲となります。

図の中で二重線の範囲が山手線内と大阪環状線内の範囲です。
・幹線と地方交通線
電車特定区間から外れた路線が、幹線か地方交通線となります。
関東では下記の路線が地方交通線です。

水郡線:水戸-安積永盛上菅谷-常陸大田
烏山線:宝積寺-烏山
日光線:宇都宮-日光
鹿島線:佐原-鹿島サッカースタジアム
東金線:大網-成東
久留里線:木更津-上総亀山
八高線:八王子-倉賀野
吾妻線:渋川-大前

電車特定区間外で上記以外の路線は全て幹線になります。
つまりローカル線には特別な運賃体系が設定されているのです。
・違う運賃体系をまたいだ場合の計算
山手線内の運賃は山手線の中で終わらせる必要があります。
たとえば『品川⇒駒込』は19.0kmあります。
この距離の運賃を、仮に各4段階で計算するとどうなるか?

山手線内運賃16〜20km:250円
電車特定区間運賃16〜20km:290円
幹線運賃16〜20km:320円
地方交通線運賃16〜20km:320円

同じ距離なのにこれだけ差が出ます。
(幹線と地方交通線は同じ運賃ですが、この2つはもう少し遠距離になると変わってきます。)
このうち、品川⇒駒込は山手線の範囲内ですので、山手線内運賃が適用され250円となります。
では『品川⇒十条』の場合はどうでしょう。
品川⇒十条は18.9kmありますので、先ほどの品川⇒駒込とほぼ等距離です。
運賃枠は同じ16〜20kmの運賃が適用されます。
しかし、品川-池袋は山手線内ですが池袋-十条は山手線の外になります。
この場合ひとつ上の運賃範囲の設定になる電車特定区間の運賃に変わります。
つまり、電車特定区間運賃の290円が適用されることになります。
わずか池袋-十条を山手線から外れたために、適用運賃がかわるのですね。


さて、ここで勘が鋭い方は気づいたかもしれません。
先ほどの西船橋⇒八街を千葉で降りた場合の話ですが、電車特定区間運賃の適用範囲が千葉までと言うことに関係します。
山手線内から飛び出すと電車特定区間運賃に変わるということでしたが、電車特定区間から範囲外に飛び出した場合は、幹線運賃か地方交通線運賃を全区間に対して適用するのです。
西船橋⇒八街は45.3kmあります。
千葉⇒八街の総武線は幹線ですので、全区間に45〜50kmの幹線運賃820円を適用することになるのです。
もしこれが電車特定区間だったら780円なんですよね。
さて、今回は千葉で降りたということです。
そのため西船橋⇒千葉が電車特定区間になるのです。
西船橋⇒千葉は18.6kmで290円。
これが幹線運賃だったら320円となっているところです。
ということで千葉で区切ったために、偶然にも西船橋-千葉が安い運賃体系になったということですす。
となると、千葉⇒八街480円と合計して800円となっていたところが、770円となったわけです。


・・・あれ?まだ安いですよね?


西船橋⇒八街は820円だったはずなので、まだ20円安いですね。
実は、これにはもうひとつからくりがあります。
対遠距離分離に関する運賃上昇率との絡みによる珍現象で、どちらかと言うとこのからくりが非常に複雑ですが応用が効くJRの奇妙な運賃制度です。
じつはメインはこっちの方のからくりなのですが、これはまた次回。