読書の秋強化期間中 ライトノベル『この中に1人 妹がいる』

プロになった"つもり"で、書評を書いてみる第1弾

この中に1人、妹がいる! (MF文庫J)

この中に1人、妹がいる! (MF文庫J)

MF文庫Jお約束のハーレム系の作品。
主人公はとある大企業の息子。
冒頭で父親が死んでしまい、息子である主人公は高校卒業と同時に父親の家業を継ぐことになるが、遺言により高校在学中に生涯の伴侶となるべき女性をみつけ、卒業後に結婚することが条件だった。
そして、それを受け入れた主人公は父親が通っていたエリート高校に編入して、生涯の伴侶を見つけるべく学園ライフをはじめるのだが、そんな彼のもとにある人物から電話がかかってきた。
その相手とは?

この手のお約束と言えば、

明らかに自分に好意をもった女性が複数現れるのに、なぜに主人公はだれともくっつかない。

というのが一番真っ先に思いつくだろうと思う。
読者からすると、選びたい放題なのにこのヘタレが!!
となるところだが、まぁ大抵の作品は主人公が鈍感だからとか、主人公が優柔不断で済ませるところだ。
実際、お約束とばかりに多いのだが、この作品はちょっと違う。
いきなり出会ってから主人公に対する好感度MAXバレバレな女の子が2人登場し、手を出せないでいるところは他の作品とは変わらない。
しかし、その手を出さない理由が今までにない、ある意味斬新な設定。
それこそがこの作品のタイトルにもなっている『この中に1人 妹がいる』ということ。
実際に知らずのうちに相思相愛になった女性が、実は生き別れだった血のつながった実の妹だったらみなさんどうしますか?
普通だったら『いくら大好きでも血のつながった妹とは・・・』としり込みするでしょう。
また、それが元で恋人としては破局につながるのは必然ではないかと。
まぁ、中には『妹だろうがかわいけりゃ、血のつながりなんて!!』なんて人もいるかもしれませんが。


この作品はまさにそこを付いた作品で、兄が大好きな妹は兄の嫁になろうと考えた結果、兄に妹であることを隠して魅力ある女性として近づこうと画策します。

『血のつながりがある妹という事実を知っているから、家族として愛せるのです。でも、それを隠して兄に近づいたら、それでもお兄様は私が血のつながりのある妹として認識して家族として愛せますか?』

そんな顔も知らない、あったこともない、今まで存在すら知らなかった自分の妹が、まずは声だけで兄に告白。
そして隠れながら一人の女性として兄に近づこうとします。
主人公である兄は、もちろんだれが妹なのか分かりません。


好感度MAXで自分を慕ってくれる可愛い魅力的な女性に翻弄されながらも、『もしかしたらこの中の誰かが妹かもしれない』という疑心暗鬼になるため手が出せないという設定が、この作品の大きなポイント。


果たして主人公は、自分の妹をDNA鑑定もせずに見つけ出し、さらには自分の生涯の伴侶となる素敵な女性を見つけることができるのか?


文章全体としては『魔女ルミカ』や『名担当』などで、ラノベをつかんでいる田口先生だけにそこそこいい感じ。
絵もいまどきのラノベ風で悪くはない。
同系統の作品が渦巻き、ラノベ文庫レーベル同士だけでなく、MF文庫Jの場合は同レーベル内でも生存競争が激しい世界。
ハーレム系ラブコメ作品としては、この設定の作りようで、まずは一歩先に抜き出た作品だと思います。


総合評価:★★★★