ライトノベル『はたらく魔王さま』

はたらく魔王さま! (電撃文庫)

はたらく魔王さま! (電撃文庫)

異世界エンテ・イスラでその征服を着々と進め、順調に見えた魔王とその配下の軍団の快進撃。
しかしたった一人の勇者の出現によりその構図は転覆される。
勇者を筆頭とする人間の軍勢は、各地で魔王軍を破りとうとう魔王の住まう城まで攻め立てた。
もはや敗北寸前の魔王は、勇者に敗れてその存在が尽き果てる瞬間に逃げる事に成功。
異世界をくぐるゲートでその逃げた先は、現代日本の東京渋谷区笹塚ww
この世界では高度に発達した文明が、神や悪魔の存在が希薄なため、魔王は魔力が得られず普通の人間と変わらない能力しかない。
かろうじて使えた催眠能力により、この世界に何とか馴染むようにがんばる魔王。
その目的はエンテ・イスラに戻り再び覇権を握る事・・・・の前にまずは失われた魔力を取りもどすために、日本で生活するための当面を凌ぐ事に。
六畳一間のボロアパートに住み、マ●●ナルドでバイトをしながら、そのいつかの日のためにせっせと日本経済との戦いをする。
しかし、その魔王の元にエンテ・イスラから勇者が魔王討伐のために追いかけてきた。
その勇者の目的はもちろん魔王討伐・・・ではなく、魔王討伐の準備をするために、当座の生活を行うための資金繰りと住居の維持。
そのために勇者は日本経済との戦いをする。


そんな魔王と勇者が渋谷区笹塚で繰り広げる、壮大なファンタジー・・・・だよね?


これまた系統の変わった魔王と勇者の物語がやってきた、今年度電撃小説大賞銀賞の作品。
ということで新人さんですが、新人にしては文章と設定の作りこみは見事。
それと本人が色々経験したのか、かなりというより絶妙な生活観漂う、魔王さまと勇者になっています。
なんか、妙に世界の秩序や人間との関係性など、異世界にいた頃と変わった魔王に対し、脅迫めいた脅しやおそらくは勇者らしくない言動が目立つ勇者。
ギクシャクしながら、また絶対に相容れないはずの二人が、どういうわけか奇妙な関係で深いところでつながっているのが、この作品の魅力ではないでしょうか?


まだまだ、やれそうな内容でしたし、結構いい作品だと思います。
著者の努力次第では、著者も作品も伸びる可能性があります。


総合評価:★★★☆