キャットテイル・アウトプット!

神野オキナ氏の新シリーズ。
ネコミミ、尻尾以外外見が同じ異星人との交流が始まっている日本。
そこで出会った、超法規的な権限を持つ時限捜査官と、その護衛対象である少女メアリーのふれあい。
そして何者かに襲われ時限捜査官"綴"が立ち向かうアクションがメイン。


いつも思うけど、神野オキナ氏の作品は、出てくる兵器や組織などの描写がやたらリアルなんですよね。
しかし、丁寧かつ適度な説明で読者を置いてけぼりにしない書き方は絶妙なんです。
前のシリーズもそうでしたが、このシリーズもなかなかいい感じで導入部を入れています。


しかし、それが裏目になる事もあります。
まず今回の導入部では、登場人物の個性がイマイチつかめなかった。
その説明や世界観のさりげない解説にページを取られすぎた感じも伺えます。
そして何よりも、異星人の存在意義と、地球人と異星人がどういった交流しているという描写が全くない。
まぁヒロインがあんな感じの設定なので、これはどうしようもないのだが『この物語は異星人が存在するんですよ・・・だからどうした?』という風しか読み取れないんです。
あれですよね?『アソビにいくよ』シリーズか何かと関係しているからかな?
私はそっちを読んでいないので、ちょっと理解できないところがあったが。
もっと異星人との交流の設定を織り込むか、逆に設定自身は続刊以降に明らかにさせて、以降に物語を膨らませるのもよかったかも。
この1冊だけを見た場合では実に中途半端な設定だった。


だけど、さすがに長い事やっているだけあって、同じMF文庫Jで書いている榊一郎氏とならび、作品全体は非常に安定した構成です。
先に書いたところがちょっとマイナス方向だったかな。
しかしながら、続刊は期待できそうですし、神野オキナ氏ならば面白くしてくれるでしょう。


総合評価:★★★