奥ノ細道・オブ・ザ・デッド

奥ノ細道・オブ・ザ・デッド (スマッシュ文庫)

奥ノ細道・オブ・ザ・デッド (スマッシュ文庫)

時は江戸時代五代将軍、徳川綱吉の治世。
その江戸になぞのおどろ歩きをする死者の群れ。
死僕と呼ばれる彼らは、生きている者の肉を食らい、死んだものは感染し死僕となる。
死僕が大量に広がる江戸の街に住む、俳諧師松尾芭蕉は幕府の側用人"柳沢吉保"に公儀としてこの謎を探るように命令された。
かくして、松尾芭蕉曾良のあや解きの旅が始まった。


これまた、奇を狙うような作品が現れたものだ。
奥の細道とゾンビをくっつけるとは恐れ入った。
そういえば、武田軍敗走劇とゾンビの合体マンガがあったが、時代劇とゾンビは融合するのに相性がいい・・・わけあるかww


といいつつも、単に奇を狙っただけの作品ではない。
目的である謎解きの旅をしているところが意外にもよくできてはいる。
芭蕉がゾンビの謎を解く旅をする奥の細道ということだが、実はこの物語、芭蕉ではなく曾良視点で進みます。
だからこそ、実際に謎を解くのは芭蕉だが、曾良から見ている客観的な見方なので、読者としてもいろいろ移入しやすいかと思います。


江戸から草加、日光、殺生石、白河・・・行く先々でゾンビと戦い、いろいろ情報、証拠をあつめ、その背後にうごめく謎の組織と怪しい花。
そんなゾンビの秘密と背後関係がじわりじわりと判明してくる、一本道の筋が通ったストーリー展開です。
読んで行くうちに、だんだんとその謎がわかってくるのは、一種の冒険譚に近いところもあります。
しかしながら、旅先でのイベント展開が速すぎることが、めまぐるしさを感じてしまった。
とにかく数ページでイベント終了して、次の目的地に向かってしまうところなんかはちょっと性急すぎるかもしれない。
あと、クライマックス展開も強引で早すぎる様にも感じてしまう。
そもそも芭蕉曾良の無敵ともいえる戦闘能力の言い訳と、ゾンビ大量発生の謎解きがあっさりなような気もします。


そして、これ続くんですね・・・
とりあえず、続きがあるのかわからないから、最悪これで終わりにできるかどうかということではなく、どうも続刊前提のようです。


最後だけちょっとグダグダになりつつありそうな感じでしたが、奇を狙うだけの作品ではなかったといえます。
スマッシュではそれなりにページ数も多く、値段も張っていますが、悪くはありません。


評価:★★★☆