2009年 ライトノベルはどうするべきなのか?−電撃文庫編−

この日記で、2008年にオリコンに載ったラノベ作品の統計をレーベルごとに集計したが、では2009年はどういう方向に向かっていくのが良いのかなと、勝手に個人的希望を書いてみたりする。
これには個人的妄想が含まれている可能性も否定できませんので、適当に読んでいただいても構いません。
まずは第1弾として電撃文庫編です。


前の日記では電撃の圧勝で集計した結果でした。
ちなみに電撃作品の2008年発行部数

ちょっと見にくいかも知れないので、数値にしたものがこちら

2008年。オリコンに名前が載った作品は全部で42作品。
一番多く売れたのは『キノの旅12』で、電撃文庫では唯一の10万部を超えた作品。
以下、『とらドラ!』『狼と香辛料』『シャナ』『とある魔術の禁書目録』などが売れ線として名前を連ねている。
レーベルでの総売上は約111万部となっている。
2位の富士見ファンタジアがこれの1/5くらいなので、電撃の圧倒的強さが伺えるところ。
では、今後の電撃はどうするべきなのか?
「別に安泰じゃない?」とか思っていると、大きく足元をすくわれる。
まず、2009年は2008年から続く不況が、大きなうねりを上げる可能性もある。
そんな状況なので、TOP独走の電撃文庫だからと言って、安心できるとは思えない。
多分電撃側も更なる売上増加を考えているのではないだろうか?


電撃が100万部近い売り上げを誇り、独走態勢だと書いたが、このグラフを見るとこんなことが伺える。

比較として、2008年売れた『容疑者Xの献身』のランキング累計と電撃文庫の比較。
東野圭吾が非常に売れている作家であることは間違いなく、電撃と比較するのもどうかと思うが、ここで言いたいのは『ラノベ最大売り上げを誇る電撃文庫でも、一般文庫本1冊に及ばない』と言う事実である。
まして、これは『容疑者Xの献身』1冊に対するもので、当の東野圭吾自信は『探偵ガリレオ』シリーズも刊行している。
さらに、『容疑者Xの献身』は2008年だけでこの状態なのだが、2009年の1月第1週から最新のランキングでもまだ名前が残っており、もうすぐランクインから連続30週目に突入しそうだ。
ヘタすると、2008年はライトノベル全てのレーベル総計より『東野圭吾』一人の刊行総数のほうが多い可能性もある。(というより、多分そうだろう)
だから、いかにライトノベルというジャンルが、まだまだ狭い範囲でしか売れていない』ということが分かるデータである。
この事実から、ラノベ作品1冊あたりにすれば、とてつもなく発行部数は少ないのだ。
そのような状況下で電撃が独走態勢状態だから、電撃以外に関しては書くまでも無いと思う。
ということで、私個人的には
『電撃はもっと売り上げを伸ばしてもらうようにがんばっていただきたい』


業界最大のレーベルが引っ張ることで、ライトノベルというジャンルのレベル、そのものを底上げすることをしてほしい。
しかし、現実は甘くないと思う。
すでに、読者数としては飽和状態なのではないかと思う。
さらにはここ数年の新規レーベルの立ち上げが、少ない読者層を食い荒らすような状況になっていると思う。
このままでは弱いレーベルは真っ先につぶれ、ライトノベルの急激な衰退が始まる懸念もある。
電撃でさえ足を引っ張られる可能性も否定できない。


さらに悪いことに、電撃のけん引役である『とらドラ!』が3月刊行予定の第10巻で終了。
アニメも原作内容全部やる見込みなので、この作品の盛り上がりはこれでおしまいだろう。
そして『灼眼のシャナ』もすでにピークは去ったように思われる。
次のアニメ化と同時に原作もそろそろ・・・。
これらの穴を埋める作品が、まだ電撃にはない。
次の候補は『乃木坂春香の秘密』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』なのだが、細かい部分は違うのだが、系統が似たり寄ったりの作品なのだ。
すでにアニメ化が決定した『アスラクライン』とて、微妙に系統が似てなくもない。
川上稔先生作品はアニメ向きではないし、『フォーチュンクエスト』も今さらだろう。
だとすると、この後に続く作品は『れでぃ×ばと』『C3』『ラッキーチャンス!』辺りになると思う。
いずれも、売れてはいるし悪くはないのだが、電撃文庫そのものの発展にどこまで貢献できるかという点では、ちょっと先行き不安なラインナップだと思うのだが?


では、電撃はどうするべきか?
これには答えはひとつしかなくて、「読者の層を広げるしかない」ということ。
つまり、今の電撃の読者は大体10代〜20代前半の男性に多い。
この枠をもっと広げること。
具体的には女性と、もっと年齢層の高い世代に訴えていくのが良いと思う。
まずは30代、そして40代だ。


そういった層に売り込みに行くのに、上記作品ラインナップではねらい目の範囲が狭いと思うし、作品点数も少ないと思う。
電撃文庫創刊が1993年。
老舗の角川スニーカーと富士見ファンタジア文庫が1988年。
初期の頃の読者は、ほとんどがライトノベルから離れてしまったのではないだろうか?
当時15〜18歳だった人も、今では間違いなく30代になってるでしょう。
この世代なら、電撃文庫のことをわかる人もまだいるはず。
もう一度、この人たちを呼び戻せるような作品展開をやったらどうかな?
今の萌え、学園物、ハーレム系の作品は30代以上には結構荷が重いかもしれない。
でも、私は大好きだ(笑)
私みたいな特殊な人間除いて、この手の作品が好きな30代以上の人はそうそういないでしょう。

上遠野浩平先生、三雲岳人先生、ゆうきりん先生、榊一郎先生あたりなら、この世代を狙った作品も書けると思う。
また、時雨沢恵一先生、柴村仁先生、紅玉いづき先生辺りは、こういった世代に受けるような作品を書けると思うんですよね。
たぶん最初は出足不調かもしれないが、長い目で見た読者世代開拓が、今のライトノベル界に必要だと思う。
それを担うのは、たくさんのレーベルが刊行できる力を持つ電撃の役目なのかなと思います。