ライトノベル『ねこシス』

ねこシス (電撃文庫)

ねこシス (電撃文庫)

人間に憧れる猫又姉妹の三女・美緒は、14歳にして、ようやく人間の姿に化けられるようになった。
そのまま人間として生きていくかどうかは、まずは人間世界を体験してから決めろ──長姉にそう命じられた美緒は、人間を理解するために、七日七晩、人間の姿で過ごすことになる。
慣れない二足歩行をはじめとして、人間の言葉、人間のお風呂、人間の友達、人間の恋愛──何もかもが初体験の美緒は戸惑うばかりで……!?
『人間嫌い』の長女・かぐら。
『人間の文化に傾倒』する次女・千夜子。
『人間が大好き』な四女・鈴。
そして、『人間になったばかり』の三女・美緒。
柄も性格もてんでバラバラな四姉妹が繰り広げる、ネコ耳ホームコメディ!

俺の妹の原点の作品


これは著者自身があとがきで語っています。
実際に読んでみると、なるほどと思いました。
ところで、この日記にて、伏見つかさであるが故のマイナス面を書いたが、ここでは作品についての感想。


この作品、個人的にはものすごく良かったです。
猫から見た人間の視点という考えが斬新で、その視点構成を活かした作品つくりが非常によく出来てます。
人間の世界って、人間だから分からないことも多いですね。
だから、猫から見ると分かる人間の行動、世界、心理などが存在し、それが人間である我々も『そうだよな』と思わせられるということでしょう。
4姉妹それぞれに特徴があって、三女の美緒を中心として他の姉妹のエピソードを織り交ぜ、読者を飽きさせない構造もいいですし、時たま入る猫という生物の特有な行動が人間とどうして違うかという解説も、ナイスタイミングで入っていました。
非常に読みやすく、また読んだ後に良かったと思わせるアットーホムな雰囲気がよかったです。


ねこシスという作品で『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の原点となった作品を堪能しましたが、この作品がどうして俺の妹につながったかというと、次女『千夜子』の設定と容姿が、俺の妹の登場人物『黒猫』に似てるということが話題になっているようです。
しかし、私がこの作品を原点と思うその本質は『猫から見た人間と言う別世界の視点』と言うところに尽きます。
この本質は、俺の妹では『非オタクのアニキが、妹の属するアキバ系オタクの世界を見る物語』ということに置き換えられていると言う点です。
非オタクから見るオタクの世界は、猫が普段見ている人間の世界と同じで、"まるで別世界なんだろうなぁ"と俺の妹を読んだとき感じました。
私は桐乃側に近い人間ですが、非オタクってきっとこういう風に見てるのだろうと感じましたね。


この別世界をみた主人公が、その世界に惹かれ、興味を持ち、接して行くことにより、ギャップとそれに戸惑いながら、自身が成長していく物語がこの2作品の大きな共通点で、両作品ともその設定を活かし、感動的に、コミカルに、そして最後はアットホーム的な要素を書き連ねる、著者伏見つかさ先生の力量が光る作品だと思います。

総合評価:★★★★