ソニータイマー説と工業製品の作り方3

まず前回です。

ソニータイマー説と工業製品の作り方?2

以前、工業製品の価値はその製品が持つ機能性によってきまるということを書いてます。
さて、今回ですがこれらから一体どうやってソニータイマーに結び付けようかと・・・。


最初に行っておきます、今回もソニータイマーまでたどり着けないかもしれませんwwオイオイ


今回は実際に工業製品が世に出るまでの開発についてです。
・工業製品の世に出すには耐用年数を決めてから
前にも書きましたが、形あるものはいつかは壊れるものです。
それを修理して何年も何十年も使ったり愛用したりするのはいいですが、工業製品にはそんな事は余りありません。
それはなぜかというと、前に書いた『機能の時間的相対評価』によるものです。
何年前のものが今は全く機能面で遅れをとってたりして使えないからで、使えない工業製品に価値はなしと言う事ですね。
ですから工業製品の場合、ある程度つかったら次の新製品に移行するのが大方の行動と思われます。
と言う事は、ある程度の製品保証期間を設けて、それ以上製品が使用されても故障しないように作るのが本来あるべき工業製品です。
では、その耐用年数とは一体どのくらい?
・メーカーに義務化されている部品の確保期間
メーカーには自分で作って販売した製品の修理用部品については8年間の保管を義務化する法律があります。
この8年間とは、製品生産打ち切り後からです。
たとえば新商品を販売開始してから、その製品を生産終了したのが1年後くらいだったら、製品発売してから9年間の間は修理ができるように、メーカーは部品を持っているということです。
ということは逆に考えてみるとその期間をすぎたらメーカーは治す気がないということですww
言い方は悪いかもしれませんが、そういうことですね。
そして、流石に9年使えば世の中の製品事情そのものが進化しているので、壊れた製品の所有者も新しいものに買い換える人が多いでしょう。
ということは9年間の修理補償があるなら、10年壊れないように製品を作れば理屈ではいいということです。
しかし、これは物によって違います。
たとえば自動車は5年10万kmが乗用車の耐用年数で、これ以上は乗用車はどこか不具合がはじまると言う考えです。
これは新車の車検が3年、2度目からは2年毎になりますので、2回目の車検にあわせていると考えられています。
車のローンも60回が多いですよね。
これも5年分です。
ですので自動車は5年を耐用年数*1と考え、それ以上はなるべく故障しないように作ります。


こういった考えで、工業製品の開発が開始されます。


・工業製品は試作わずかで、試験が異常に長い。
工業製品の開発サイクルは最近は短くなっており、どんなに長くても2年以上はまずないです。*2
つまり、今出ている商品は2年前に考え出されたアイディアで作られており、今現在は2年後の市場を睨んだ商品開発をしているのです。
しかし、実際に工業製品を作るとなると2年では大変です。
実際に工業製品はどういうサイクルで作るのか?

企画会議⇒設計⇒試作品の製作⇒耐用適応試験⇒耐久試験⇒生産判断企画会議⇒製造ライン開発⇒製造試作⇒量産開始⇒販売

主としてこんな流れです。
これを2年くらいでやるわけです。
さて、この中で一番時間を食うのは試験に関する項目です。
特に耐久試験は非常に長く厳しいものです。
よく考えると分かりますが、10年持つ製品結果を2年で大丈夫と判断しなければいけないんです。
普通だったらありえませんね。


・長い時間をかけなければいけない試験に関する項目
先にも書いたとおり、工業製品の製作過程で一番長いのがこの試験です。
試験には大きく分けて2通りに分かれます。

1-耐用適応試験
試作品が商品企画段階に於いて決められた性能を有しているか確認する項目

これは機能面の確認を行う試験で、別名『性能確認』と呼ばれるものです。
要するに、Blu-RAYレコーダーの試作品を作ったなら、ちゃんとBlu-RAYディスクが再生できるのか?
HDDレコーダー部分はちゃんと録画するのか?
録画した画質は設計通りの品質を保っているか?
果ては、地上デジタルチューナーはちゃんと映っているのか?
基本的なところがちゃんと機能するのかということです。
ここでも出ました『機能』ですが、工業製品の要であるこの機能というもの、試作品を作ってみてちゃんと確認して機能しないことがあるんですよ。
『〜〜してみなければわからない』なんて言葉ありますが、実際にこういうことはあります。
それで、予定通りの機能が満足できないなら、前段階に差し戻しになります。
試作品製作過程で間違いがなかったか?
もし、間違ってなければさらに前工程の設計段階になります。
それも間違ってなかったら、商品企画そのものを見直すことになります。
ですから非常に大事な項目です。

2-耐久試験
試作品が耐用年数使っても、必要最低限の機能を有しているかどうか確認する試験。

先の耐用適応試験をパスしたら、こんどは耐久試験に移ります。
先にも書きましたが、耐久試験は10年持つものを、わずかな期間で判断しなければいけないのです。
したがって、短期間に圧縮して行うことから加速試験なんて呼ばれることもあります。
実際にどうやって長い期間の物を短期間で判断するのか?
これは下のグラフのようなものを使います。

これは寿命曲線と呼ばれるもので、加速耐久では良く用いるものです。
この曲線は、今まで実施した似たような部品の実際の耐久結果、使用している材料の寿命、その他の現象から計算で求めます。
青いラインが商品の機能を維持できる限界で、これを超えると壊れるということです。
横軸は使用年数になり、赤い線がその部品(商品)の持つ耐久性能ということになります。
要するに、青いラインと赤いラインが交差する点が、目標の耐用年数以上ならOKということです。
それで、半年くらい耐久試験を行ったあと、結果を参照してこのラインに載せます。
無事にこのラインに乗っかれば、この製品は10年後はまだ大丈夫ということになるのです。
もし乗っからずに、早く壊れるとかいうことになれば、またまた前段階に差し戻しになります。


これが寿命曲線を利用した耐久試験の加速方法で、ある意味この寿命曲線はメーカーの命とも言うべきものです。
この線をたくさん持っているメーカーほど、短期間で物を作ることができます。


さて、ここまで書きましたが、世の中の工業製品って部品集めて完成というわけじゃないんです。
こういった試験を繰り返して世の中に商品を出していくのです。
これは、トヨタのリコール問題などにも関係しているところで、工業製品作りの重要部分です。


結局ソニータイマーまで行き着きませんでしたが、次あたりは締めくくれるかななんて楽観的な考えをしたりしてます。
長くなりましたので、今回はこの辺で・・・

*1:消耗品は除きます

*2:昔は4年くらいだった