久々に鉄道ネタ。記事を鵜呑みにして肝心なことを見逃さないように私自身が指摘します。

久しぶりに鉄道ネタを・・・
いくつか興味のある記事が出てまして、しかも一般の方でもそれなりに興味をそそられる話があると思います。
ですが、記事としては正しくても、その記事から全体像を見抜くのはその筋に詳しくない人には意外にできない場合もあります。
ですので、肝心なことを見逃さないように私自身が『こういうことだと思う』と思えることを指摘します。
まずはこちらの記事

地下鉄 東京メトロと都営 統合に向け動くもハードル高く(yahooトピックス)

最近よく話題になる"都営地下鉄東京メトロの統合経営の話題。
リンク先の記事は都営地下鉄東京メトロの生まれた経緯、現在の状況などを端的に分かりやすいように説明している。
秀逸な紹介記事であり、尚且つ地下鉄関係者や鉄道マニアなどの詳しい人以外にはよくわかる記事だと思います。


ところで、すでにお気づきかもしれませんが、なぜ私が敢えて"都営地下鉄"を大きな文字にしているのか?
それはこの記事が肝心なことを忘れていることを指摘するために大きくしています。


その前に、最近よくこの話題出ますよねぇ?
まず、この記事の内容ですがポイントは2つあると思います。
それは下記の2点

1番目:都営地下鉄東京メトロという、2つの経営組織に分かれていることによって、如何に非効率な問題が起こっているか。
2番目:この2つの経営の統合には一体何が問題視されているのか?

都営地下鉄とメトロという2つの経営組織があるということは、東京近郊の人には2社にまたがって初乗り2回払ったりするので割高。
地方から来た人には2社あることを知らずに、改札で止められたりする。

こんなことがあるから、一般的に2つの団体が存在することは不便なんだ。
でも、経営統合はなかなか難しい

ということを言っているのだと思います。
しかし、この記事乗客側の視点で立ってみているのですが、経営統合した場合の見えない部分を全く指摘していない。
如何にも『都営地下鉄東京メトロの統合は非常に有益だ』ということを言いたいがために書かれた感じがしないでもない。


それで私は敢えて都営地下鉄を大きいフォントにしていました。
最初に言っておきますが、日本各地どこをどう探しても都営地下鉄なんて経営組織は存在しません。
この記事に出てきている東京都の副知事も"都営地下鉄"とは言っていないものの"都営"としか言ってません。
で、鉄道に詳しくない人のために分かりやすく書きますと、都営地下鉄は"東京都交通局"という公共事業体の中の組織で、東京都交通局はその名の通り東京都の地方公営企業体なのです。
ですので、都営地下鉄東京メトロ統合は物理的にできません。
都営地下鉄が単独で経営組織ならばこの話ももう少しまともになっていたのでしょうが、実際には東京都交通局東京メトロの話し合いです。
では東京都交通局は他にどんな交通事業を行っているのかということですが

・都営バス
・都電
・日暮里-舎人ライナー
上野動物園のモノレール

地下鉄以外にこれらを経営しているのです。
リンク先の記事のように、地下鉄は黒字ベースになってますが、上記4点の交通事業は都電荒川線以外はすべて赤字です。
特に建設後間もない日暮里-舎人ライナーは、建設費の償却に加え建設費の借金、そしてそれらを除いた純粋な収支も赤字という大赤字路線です。
都営地下鉄でさえ莫大な建設費に伴う長期債務が大きすぎる。
収支に関しては黒字の都営地下鉄も、その収支分はこれらの赤字交通に回している状態です。
東京メトロ都営地下鉄の統合はすなわち『これら地下鉄を含めて5種類の交通ネットワークをまとめて統合する』ということです。


いずれにしろ、都営地下鉄だけをメトロにくっつけるとう話ではないのです。
赤字分や赤字路線に借金もセットで東京メトロに背負わせるか?
みなさんが東京メトロ社長だったら『別に都営地下鉄なんかと経営統合する必要なし』と判断するのは当たり前ですね。
では、仮に純粋に都営地下鉄だけを東京メトロに売却したらどうなる?
それなら東京メトロも考えるかもしれません。
ですが、よく考えてください。
残された赤字の交通網と借金はだれが背負うんでしょうか?
東京の赤字交通ですから、都民の税金で賄いますし、都営地下鉄でできた借金ですから、都民の税金で賄います。
ですが本当に都民の税金だけで賄えるものなのでしょうかね?
そもそも、都民と言っても地下鉄やバスなどの恩恵にあずかれない奥多摩地域や、諸島部の都民まで払うのは納得できない話でしょう。
そうなったら、都が国に泣きついて国税を投入してもらうか、特別法か何かで借金補てん分の運賃値上げを国を通してメトロに要求するかのどちらかでしょう。


しかし、これにも問題があります。
現在は国土交通大臣管轄下の特殊会社である東京メトロで、記事にもあるように都と国がそれぞれ大株主です。
しかし、東京メトロは完全民営化の一つとしてこの株式をすべて売却する方針です。
もしすべて売却されれば、東京メトロは完全な私企業です。
そうなったら、東京都は経営にはタッチできません。


実のところこれが大きいのではないかと思っています。
つまりは、東京メトロがいずれ完全民営化を達成する⇒東京都は経営にかかわれない⇒経営統合は無理。
だから、まだ都が大株主の特殊会社のうちになんとか話を付けようとあせっているのではないのかなと思ってます。
思えば、ここのところの都営地下鉄東京メトロ経営統合の記事って、全部東京都側からの意見しか出てないような気もします。


この記事は最初から最後まで"都営地下鉄"という言葉しか出てきませんでしたが、東京都交通局と書くべきところを都営地下鉄と書いて本質をぼやかしているのか、記事提供元が都営地下鉄だけをピックアップして公開したのか。
いずれにしろ、地下鉄経営統合はほとんどむりじゃなかろうか?


ということで、この記事を読んでの私の結論

地下鉄経営統合は表向きばかりの利点を挙げていいことづくめのように見えるが、実は負の方が大きい。
借金とバスなどの赤字交通事業の扱いが大きなポイント

この2点がはっきりしないと、私は地下鉄経営統合には賛成できませんね。


次の記事もあるのですが、時間の都合で後ほど