読書の秋強化期間 ライトノベル『シンクロニシティ・ゼロ』

同一レーベル連続紹介 HJ文庫特集 第6弾

シンクロニシティ・ゼロ (HJ文庫)

シンクロニシティ・ゼロ (HJ文庫)

エピジェノシスという進化生物の脅威にさらされている日本。
そんな奴らと戦うのは、エピノームスーツを装着したまだ10代の少年少女たち。
彼らは普段は"学園"という市街地住人のための防衛拠点で、平時は学業に専念している学生で、エピジェノシス襲来には出撃し撃破する。
神宮寺隼人もその学生で、戦闘能力も最強クラスを誇るエピノームスーツ装着者。
ある日、木佐薙令という少女が転校してきてから、神宮寺の運命が変わる。


木佐薙『あなたと合体したい』
神宮寺『それ違う物語だから』

エピジェノシスの闊歩する世界観、エピノームスーツ装着者との戦闘、その他のSF的設定などはうまくできている。
このエピノームスーツ装着者同士は感覚を共有し合うことで、更なるパワーアップを果たし驚異的な戦闘能力やスピードを生み出すという設定がある。
そのために高速戦闘描写をしなくてはいけない部分があるのだが、そこはうまく表現しているんだけど、肝心の敵とのバトルのメインの部分がうまく読みとれなかった感じがする。
それからヒロインの令がどうにもしっくりこなかった。
隼人の初対面でのあれとか、後半に性格がガラッと変わった後がどうもいけない。
なんというか、変わりすぎのような気もする。
全体的に主人公との会話や接触が、かみ合ってないという感じを受けた。
ここはあとがきで触れられているのだが、これも状況を悪くしてしまったような気がする。
本編の不足分を修正して・・・というより言い訳に読めてしまった。
あとがきを書いた時点では、続刊が出せるかどうかが分からない状況下だったとは思うが、敢えてあそこで出すべきではなかったのではないと思うのですが?


主人公はラノベ的主人公を貫き通したような、芯がしっかりしているのかしていないか分からないヘタレっぽいww主人公。
某レーベルの某作品の主人公と比べてインパクトが無く、印象が薄かった。
まぁ至って主人公というのはこんなものだが、もう少し主人公を際立たせても良かったかもしれない。
戦闘シーンでは圧倒的に主人公中心で見せるだけに、日常パートでの主人公の印象の薄さがちょっと残念かな。


かと言って悪い部分ばかりではなくて、いいところもある。
先にも書いたとおり基本的な考証や設定がしっかりしている。
そして、サブヒロインの『細井ナノ』
彼女と主人公の絡みは良くかみ合っていると思う。
このナノは物語最初から最後まで、キャラを貫き通した。
性格はしゃべらないわけではないが、本当に無口。
しかし、無口なのに彼女の性格やら感情がよく書かれていた。
こっちがヒロインなんじゃないかと一瞬錯覚したww
このキャラクターはヒロインとは全く正反対で、非常によく描かれていて良かったと思う。


ただ、せっかくのいいキャラも、相手となる主人公とヒロインがどこまで良く描かれているかにかかってくる。
今のところ主人公とはいい関係にあるので、後はヒロインとの絡み方かな。
ここでもそれらしき兆候はあったが、△関係とかまで行くとか・・・。


今後エピジェノシスとの戦闘が過激になっていきそうな雰囲気もあったが、このまま戦闘ばかり比重を置いて物語を進めるには、そのメインとなるキャラクターたちの描写が圧倒的に足りてないと思います。
思い切って、戦闘なしで学園ラブコメモードをしばらくやってみて、キャラクターをもっと立たせることもありかも知れない。


やりようによってはもっといい作品になるかも。


総合評価:★★★