鉄道でよくある質問2『大回り編その2』

さて、前回は大回りがなぜに生まれたのか、そしてどういった存在なのか説明しました。
今回は、実際にどういったことが大回りなのか、その経緯を説明していきたいと思います。
ちなみに前のやつはこれ

鉄道でよくある質問その2『大回り編その1』


鉄道の原点で基本原理である片道1行程
鉄道の利用(今回はJRに限定します)はフリーきっぷなどの範囲内を定めて自由乗降が可能な類の切符をのぞいて、一つの大原則があります。
それが片道1行程の切符の発行です。
鉄道において切符は必ず片道で、どういう経路を通って目的地に行くのか?それをはっきりしないといけないのです。
これが鉄道における原則ですが、選択乗車に関しては、このうち経路だけが特定されない特殊な事例・・・すなわち特例になるのです。
まずは絵を見てください

田町→田端まで向かう場合です。
この絵では、東京を経由していますので

田町→浜松町→新橋→有楽町→東京→神田→秋葉原御徒町→上野→鶯谷→日暮里→西日暮里→田端⇒上中里⇒王子⇒東十条⇒赤羽

と移動します。
ところで、この区間において仮にJRの別路線が合った場合。

上記の絵の青いラインで回った場合のことです
本来は赤いラインを経由した場合、赤い経路の距離に応じて金額を払い、青い経路はそのまた実距離の運賃を払います。
この場合、田町から赤いラインを経由した場合は17.8kmで290円青いラインを経由した場合は23.1kmで380円になります。
では仮に上記の区間が選択乗車区間として認められていた場合はどうなるのか。
答えは以下のすべてがありえることになります。

1.青いライン経由の切符を買って赤いラインを使ってもいい。
2.赤いライン経由の切符を買って青いラインを使ってもいい。
3.赤いライン経由の切符を買って赤いラインを使う
4.青いライン経由の切符を買って青いラインを使う

しかし、ここで考えてみてください。
1の場合は380円の切符を買って、それより安い区間である赤いライン経由で行きますので損をします。
2の場合は290円の切符を買って、もっと高いはずの青いラインで行きますので得をします。
1を実行した人と2を実行した人の間に不公平が生じるわけです。
3と4は本来の鉄道のあるべき姿で、この選択乗車が絡んだために1と2の現象が生まれてしまいました。
この不公平をなくすにはどうするべきなのか。
それは簡単なことで、鉄道を使う人すべての人の経路が分かればいいわけです・・・ってそんなのわかるわけないだろ!!
現在、東京付近だけで約1300万人もの人が、JR東日本の近郊区間を利用しています。
そんな人すべての経路を特定し、それに見合った乗車券を販売するなんてどう考えても無理だということは鉄道に詳しくない人でも分かりますよね。
だから、選択乗車が可能な区間に於いては、不公平をなくすために2と4を排除した考えを取ることにしました。
そう、たとえ青いライン経由すると分かっていても、最初から赤いラインの乗車券を販売することにしたのです。
そうすれば、鉄道会社側が損するだけで、乗客は最低でもそれに見合った分以上のお金を払うことは無くなります。
もちろん青いライン経由の切符が販売できないわけではないのですが、下手なことして後でブーブー言われるのは嫌なので、損はしないが得する可能性はあるという方策だけをなるべくとるようにしたのです。
そして、東京近郊や大阪などはとても人が多い。
しかも、複数のJR路線がひしめき合うので誰が何線を使ったかなんてとてもじゃないけど分かりません。
そこで、こういった複数の路線があるところでは”範囲を定めて、全部選択乗車可能にしちまえ”ということにしました。
それで大都市近郊区間という区間が生まれます。
大都市近郊区間は東京、大阪、新潟、福岡の4地区に設定されており、特に東京は範囲がどんどん広がり、現在の東京近郊区間は以下の通りです。

この区間内のJR東日本の路線*1は全区間選択乗車可能な範囲になっています。
ところが、これをこう考えた人がいます。
東京からとなりの神田駅に向かう場合を例として見てみます。

普通だったら、赤いラインでひと駅です。
しかし、選択乗車可能範囲内である山手線を使って逆回りでいったらどうなる?
もちろん選択乗車可能なので、東京⇒神田ひと駅分の距離の運賃でも理屈ではOKです。
そうなると、もう後には引けません。
「じゃあ、俺はこうだ!!」


「お前の力はその程度か!!俺ならこうする」

と、まぁ選択乗車の範囲内で片道長距離行程を引っ張るわけです。
しかしながら、例に挙げた行程はいずれも東京⇒神田の片道行程になっていることに気がつきましたか?
これこそが選択乗車を応用したもので、最後の絵を観た人は気が付いたかと思いますが、傍から見ればかなり回っているようにしか見えません。
そう、これこそが大回りと呼ばれるようになった所以なのです。


さて、2回にわたる長い説明でしたが、どうでしたか?
鉄道マニアの皆さんは、ほとんど意味を理解して心得ているとは思います。
しかし、最近は素人でこれをよく知らずにトラブルに陥っている人をちらほら見ます。
これに限らず、何事もルールがあり特例がある物です。
それを知る知らないは個人の都合ですけど、知らずに手を出して痛い目見たりするのはあまりよくないですね。
もしこれが何かの役に立てれば幸いかと。


さて、私も久しぶりに大回りしに行きますかね。


次回は大回りをしたことにおける特例の特例について、書ければいいかなと考えています。

*1:ただし現在は新幹線は含まれない