京葉線の快速廃止に見える、JR東日本の野望

3月のダイヤ改正では新幹線とか、新線開業とかに眼が行きがちだが、こんな内容もある。
それは「京葉線の朝ラッシュ時の快速廃止」というもの。
地元民、利用者にとっては新幹線の改正よりも身近に感じることが大きい内容でしょう。
それについて、細かい考察をした記事があります。

快速電車が消える――そこに鉄道会社の“野望”が見えてきた(bussinesMedia誠)

ここで最終的に沿線開発の不動産計画までもりこんだ内容となって締めくくられる。
なるほどとおもったことがあった。
それはJR東日本という会社について。


鉄道会社は路線をつくって不動産と一体事業にするのは、もはやマニアや専門家だけではなく、一般人でも常識と思うのではないか?
何をいまさらと思うかもしれないが、これがJRとなると話は変わってくる。
意外と知られていないが、元国鉄であるJRというのは会社であるように思えて、普通の人が考える会社とはまったく違う組織なのです。
JRは簡単に書くと会社ではありません。
特殊会社と呼ばれる組織で、その実態は会社とまったく変わります。
そして、そのもっとも足る例は会社が成り立つ法律にあります。
JRに限れば「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」というこんな長ったらしい名称の法律で経営されています。*1
なお、あまりにも長いので普通は"JR会社法"と呼ばれるのが一般的です。(以降はこれで呼びます)
普通の鉄道会社はこの法律ではやっていません。
民間会社には民間会社の法律がありますので、この時点ですでに別物の存在なのです。
ちなみに、東京メトロもこのJRの仲間に入ります。*2
で、この法律で根本的な違いいくつかありますが、特に大きいのは"鉄道事業以外の事業に関する規制"というところかと思います。
簡単に書くと「本業である鉄道事業以外やってはいけません」ということなんですね。
これは国鉄時代もそうでした。
国鉄は本業である鉄道の運営以外の業務を法的に認めておらず、ただひたすらに鉄道事業を行うことが任務みたいな扱いでした。
この鉄道以外に事業という行為には不動産事業も含まれます
私鉄の沿線って駅とか駅前が一体化された街づくりになっている駅が多いかと思いますが、国鉄からなるJRの路線はなんか駅前が廃れているというより、殺伐としている印象がありませんか?
これはその規制に多少なりとも影響された結果かと思います。
不動産事業ができないため、駅舎以外の土地に手をつけられず、また百貨店事業などの駅併設事業も自身ではできません。
逆に純粋な不動産開発会社は鉄道の駅舎には手を出せず、周りの土地しか手がつけられません。
そしてどちらも音頭が取れないならば、複数の開発事業者が入り込み、勝手に駅前開発を始めちゃいます。
これでは一体化した街づくりもできません。
法的に国鉄はそれができなかったのに加え、乗客は増え続け一体感のないまま駅も町も発達していった結果が今のJR沿線です。
これが私鉄との大きな違いです。


さて話が長くなりましたが、要するにJRという組織は私鉄では当たり前の不動産事業ができないのです。
そんな状況の中JR東日本が不動産に動いたと仮定するのはどういうことか。
JR東日本はJR化後、順調な経営基調を示しておりすでにひとつの会社としてやっていけると判断された結果、2001年にこのJR会社法の適用からはずれ民間会社としてスタートしました。*3
つまり、この2001年からやっと不動産含めいろいろな事業ができるようになったのです。
その期間わずか10年ちょっと。
大正時代に開業し、開業時から一体事業を行ってる阪急。
不動産をやるために鉄道を開業させた目黒蒲田電鉄(後の東急)←こちらも大正時代
そのほかの私鉄と比べても、相当な遅れをとったのは認めるしかありません。


そんな遅れをとったJR東日本だから、今沿線価値を見出して不動産を一生懸命やろうとしているのかもしれません。


ちなみにJR九州はまだJR会社法の適用下ですから不動産業はできません。
しかし、HPをみればわかると思いますが、実際に不動産事業をやっています。
なので、必ずしもやれないということではありませんが、いろいろあるので。

*1:この名称、正式な名称なんです

*2:メトロは東京地下鉄会社法という法律で経営されている

*3:同時にJR東海JR西日本も外れている。