マニア以外向け。鉄道を有効利用しましょう。その3『特定区間運賃制度の話』

以前、会社の同僚から相談された話。


会社の同僚は出張した時に電車賃の精算をしていたのですが、変な現象に気がついて社内でも鉄道マニアで通っている私にw相談してきました。
その内容は『往復で電車賃に何かおかしな点が見られる』という内容でした。

では、一体何がおかしかったのでしょうか?


と言うことで同僚に詳細を聞いてみたのですが、こういうことらしい。
同僚はまず下記のコースで出張に行った。

往路:会社⇒横浜駅浜松町駅
復路:浜松町駅⇒品川駅⇒横浜駅⇒会社

浜松町にある取引先に向かうため、電車で横浜から京浜東北線で浜松町に向かった。
そのあと、帰りに品川駅で途中下車して、別の取引先に用事があったため会ってきたそうだ。
ということなので、彼は都合3回乗車券を購入していることになる。
それは、下記の3枚

横浜⇒浜松町
浜松町⇒品川
品川⇒横浜

全部JR東日本を使った。
では、このコースで一体何が変な現象だったのかということだが、考えようではこの行程『横浜⇔浜松町』の単純往復と捉えてもよい。
帰りに品川で降りなければ、単純に横浜-浜松町の2倍の運賃を足られるのだが、帰りに品川で降りたため当然帰りの方が運賃が高くなることになる。
ところが、彼が計算をしたらこういう結果になった。

往路:横浜⇒浜松町 JR東日本450円
復路1:浜松町⇒品川 JR東日本150円
復路2:品川⇒横浜 JR東日本280円

皆さんお気づきでしょうか?
帰りの復路1+復路2の合算が430円になって、途中下車したにもかかわらず、往路より安くなっているのです。
彼は後で会社に請求するので、ちゃんと切符代金をメモしていました。
よって間違いないと言ってます。
そのため、私に『おかしな点が見られる』と言ってきたのです。
彼はこの現象が理解できず、会社に請求できなくて困っていました。


さて今回発生したこの現象は、決して彼の間違いでもなくJR東日本側の間違いでもありません。
この珍妙な現象を引き起こしたのは、日記のタイトルにもなっている『特定区間運賃制度』という特例が絡んだために起こった現象です。



特定区間運賃制度とは?

ある区間において競合路線がある場合、区間を定めて正規の運賃に対して安く設定する制度

つまり区間を定めて『そこの区間限定』で運賃を割り引くと言うものです。
さて、今回の彼のルートだが往路は下記の通り

横浜⇒浜松町は25.7kmあります。
切り上げで25.7km⇒26.0km。
JR東日本電車特定区間の26.0kmの運賃は450円です。
確かにあっています。


では、彼の復路の行程を図で書くと下記のようになります。

浜松町⇒品川は3.5kmなので、切り上げ3.5km⇒4.0km。
JR東日本電車特定区間運賃で4.0kmは150円です。
これもあっています。
次に品川⇒横浜ですが、ここは22.0kmあります。
JR東日本電車特定区間運賃で22.0kmは380円です。
・・・あれ?
彼がメモした金額と違ってますよね?
ということは、やっぱり彼は間違えたのでしょうか?

皆さんも、Yahooの路線検索などで品川-横浜のJR東日本の運賃を検索してみてください。
おそらく280円と出るはずです。

さて、実際には380円のはずなのに280円しか請求されません。
つまりこれこそが『特定区間運賃』なのです。
今回の特定区間は『横浜-品川』で、ここは本来380円ですが100円引いて280円に割引しているのです。
理由はもうお分かりと思いますが、対京浜急行のためです。
京急に客を取られないために、この区間限定で割引運賃を設定しているんですよね。


特定区間運賃制度の特徴
それは範囲(区間)が決まっているということです。
たとえば今回の横浜-品川ですが、22.0kmあります。
JR東日本電車特定区間運賃制度では、『21〜25km』の範囲内の380円を適用しますが、横浜基準ですと品川の隣の大崎まで行っても24.0kmで同じ運賃になるはずです。
しかし、横浜-大崎は380円なのに、横浜-品川は280円。
はたから見れば、いきなり100円上昇したようにしか見えません。
これが特定区間運賃の特徴で、あくまで指定されている区間を利用したときのみに限ると言うことなのです。
つまり、『横浜⇒品川は380円を280円に割り引くけど、横浜⇒大崎は京急と競合して無いから、計算どおり380円取るよ』ということです。


他にも同様な区間はあるのか?
ここまで書けば気がつくと思いますが、私鉄との競合区間にはこの制度が設けてあるところが多いです。
特に、昔から私鉄との熾烈な争いが多く、競合路線が多い関西地区は沢山設けられております。
いかに主な区間の運賃とその割引額を

関東地区主な区間
新宿-八王子(対京王):620円⇒480円(京王350円)
上野-成田(対京成):1,110円⇒890円(京成810円)
品川-久里浜(対京急):1,050円⇒890円(京急760円)
渋谷-横浜(対東急):450円⇒380円(東急260円)
新宿-川越(対西武):650円⇒600円(西武480円)


関西地区主な区間
大阪-京都(対阪急):690円⇒540円(阪急390円)
大阪-三ノ宮(対阪急、阪神):640円⇒390円(阪急310円、阪神310円)
天王寺-和歌山(対南海):1,050円⇒830円(南海850円)
天王寺-奈良(対近鉄):620円⇒450円(近鉄480円)
大阪-宝塚(対阪急):450円⇒320円(阪急270円)


他の地区の主な区間
名古屋-岐阜(対名鉄):540円⇒450円(名鉄540円)
名古屋-四日市(対近鉄):650円⇒460円(近鉄610円)

とこんな具合にあります。
この制度は国鉄時代の昭和40年〜50年代にあいつぐ値上げで、私鉄との運賃格差が生じたために取られた特例措置です。


この制度を適用するにはどうすればいいか
単純でその区間を利用すれば言いだけです。
しかし、これには重要事項がありまして区切りの駅で改札を出ないといけないのです。
たとえば、既出の横浜⇒浜松町ですが、乗車時に横浜⇒品川280円の乗車券を勝って、そのまま浜松町に行った場合は

横浜⇒浜松町:450円
横浜⇒品川:280円
差額450円-280円=170円

170円を支払うので、結局同じです。
ですが、品川駅で一度改札をでれば、そこで280円の切符は終了して新しく品川⇒浜松町の切符を買うことになります。
品川⇒浜松町は150円ですから、280+150で430円となります。
これでお分かりですか?
この制度は一度改札外に出ないといけないのです。
ですから、その改札を出る分だけ時間が取られるということになります。


特定区間運賃制度を使った例
・姫路から大阪を経由して京都に向う

通しで買うと2,210円かかりますが、先ほどの特定区間運賃制度を活用して三ノ宮と大阪でそれぞれ改札を出て、切符を買いなおすとどうなるか。

各駅間の運賃は上記のようになり、合計で1,880円となりました。
結果として330円安くなりました。
三ノ宮と大阪で電車を見送って切符を買いなおすわけですから、電車2本分くらいの時間を惜しむか、この金額を取るかはそれぞれ個人で考えてみてください。


・平塚から東海道線で新宿に向う

平塚⇒新宿は1,110円。
これを横浜と品川で切符を買いなおすとどうなるか

上記のように1,040円となり70円安くなりました。
まぁ、これなら降りる労力考えれば、通しで買っても余り変わらないかな・・・。
でも、平塚⇒新宿だったら、藤沢乗換えで小田急使うと

圧倒的に安いですけどねw


今回の制度ですが、途中で切符を買いなおす必要があるので時間に余裕があるときにしか使えません。
時間に余裕があれば使ってみてもいいかもしれませんが、やる前には何処の区間を同使うと有効になるか調べておいてからがいいでしょう。


次回は、途中下車による安くなる珍現象をもう一例紹介します。