昭和生まれのVVVF電車の旅〜関東編〜

VVVFインバータ制御。
いまでは当たり前に聞く様になったし、常識と言ってもいいほど普及した三相交流誘導電機の制御方法。


今回は関東地方で見られるVVVF搭載の量産車両で、なおかつ昭和時代に作られたもの』と題目でたずねてみようと思います。
その前にVVVFインバータについて。


交流は時間で電位差が逆転する電気信号。
1サイクル辺りに2回最大のパワーを発揮する。
実効電圧が最大の時に三相交流モーター制御子に最大の界磁励磁が働き、最大磁力が発生。
これがモーター制御子の3方向・・・つまりは360度回転する3分割均等になる120度ごとにある。
この3つの制御子に先ほどの交流波形を加えるのだが、各制御子に与える電気信号は、2π/3[rad]の位相差があり、1サイクル辺りの磁界発生の力は2π/3[rad]毎にずれるのだ。
すると、モーター回転子は2π/3[rad]毎に遅れて発生する最大励磁に合わせて動くので、結果的にくるくる回るのだ。
この回転力を電車の動作として駆動に使うのが、三相交流モーター電車である。
そして、この三相交流モーターの回転子をまわす制御をする方法とがVVVFインバータ制御と呼ばれる方式。


VVVF⇒Variable Voltage Variable Frequency』という意味の和製英語
つまり可変電圧・可変周波数制御なのである。
ということで、VVVFは"VV"と"VF"の二つに分かれます。


電圧を可変させるのは、回転トルク[N・m]を変えるため。
つまりはパワーのこと。
自転車を思い浮かべてください。
発進する時、ゆっくりながらも思いっきりべダルを踏んで力を入れますよね?
逆に高速になったら、それほど力をいれずに回転を維持するために必要な力のみを使います。
VVVFインバータ制御のモーターは、このトルクの部分は実効電圧値を変えることにより、パワーのコントロールをします。
実効値を高くすると、トルクが大きくなりより強いパワーが得られます。


周波数を可変させるのは、回転数[rpm]の制御のため。
自転車ですと、発進時はゆっくり回しますが、だんだん回転数を増やしていきますよね。
そして高速域になったらペダルを高速回転のまま維持します。
この回転数を制御する部分が可変周波数部分です。
電気信号の周波数[Hz]を変化させると、回転子が回転数が変化します。
周波数を高周波にすれば回転子はより高速回転になります。


この2つの制御で回転子の回転を制御するのがVVVFインバータと呼ばれる制御方法の一種です。



今では主流のVVVF、しかし意外と歴史は浅い
1972年に国鉄が試験車両を導入したと同時に、1975年に帝都高速度交通営団で試作車での走行試験が開始されたのが鉄道のVVVF技術の初期黎明期。
つまりはまだ40年経ってない。
日本ではじめての営業用車両としてVVVFを搭載した車両は、熊本市交通局の8200形路面電車で1982年に登場した。
このあと、日本の主な私鉄によりVVVF車両がどんどん投入されるが、あれほど黎明期に研究していた国鉄は、結局207系900番台の1編成のみにとどまった。
この207系900番台は"国鉄"最初で最後のVVVF営業電車となり、みなさんご存知の通り新型E233系の投入で、先ごろ運用を引退したばかりである。


日本発の本格高速鉄道VVVFは、熊本市に遅れること2年後の1984年に登場した東京急行6000系*1改造車両。
高速鉄道の本格的量産車は大阪市交通局の2代目20系が最初となる。


ということで、今回は昭和時代に作られたVVVFインバータ制御車両を探訪するのだが、今回取り上げる車両は以下の条件を満足している車両についてのみ。

試作車両ではないこと
第1編成からVVVF搭載であること。
第1編成が昭和時代に営業開始していること。
量産車両であり、1編成とか改造車両ではないこと
現在も利用が可能な車両であること
関東地方で利用可能であること

という条件に絞った。
この条件下ですと、該当する車両は5車種ということになります。
それでは、その5車種を新しい順番で紹介します。


5番目:東京急行1000系



第1編成営業開始日:1988年(昭和63年)12月26日営業開始
所属車両数:91両*2
現在の編成:8両編成×8編成64両(元住吉)、3両編成×9編成27両(雪が谷大塚)

東急の18m車体の運用者として登場。
主として、当時の目蒲線、池上線に投入された3両編成。
そして老朽化した日比谷線直通用の7000系置換えに登場した8両編成がある。
最初に登場したのは日比谷線直通用の1001F編成。
おりしも、年の暮れである昭和63年12月26日の登場となった。
翌昭和64年1月7日、昭和天皇陛下崩御に伴い1月8日から平成元年となっているため、本当にギリギリで昭和に登場した車両である。
なお、第2編成の1002Fは昭和64年1月7日落成という、まさに昭和最後の車両となった。
ちなみに、1002F編成の銘板は『昭和64年製造』になっているそうです。*3
これ以降は全車両平成生まれとなってます。


1000系は登場してからまだ20年という車齢ですが、既に廃車が始まっています。
東横線日比谷線の直通運用が、東横線特急運転開始と同時に半分以下に減ったこと。
メトロ03系の検車区が千住工場からメトロ半蔵門線の鷺沼検車区に移ったため、メトロ03系は全車両東急入線可能になり、日比谷線向けの運用本数を減らしたため、目蒲線と池上線に転籍したものもある。


7000系登場により、一部に廃車が出ている。
8両編成⇔3両編成2本に改良した1000系のうちあまった2両は休車扱いだったが、そのまま廃車になっている。
また、上田交通に2編成が譲渡されたが、上田交通は3両編成中中間者の2両を抜いて譲渡されたため、あまった中間車両1両もそのまま廃車になっている。
現在の1000系はほとんどが平成生まれであるため、20年前後の車両が多い。
18mの中型車体でしかも2〜3両という短編成で組成が可能な本形式は、今後地方の私鉄に引っ張りだこの車両となる可能性が高い。
東急から撤退しても、地方私鉄ではまだまだやれそうな可能性がある。



4番目:小田急電鉄1000形

第1編成営業開始日:1988年(昭和63年)3月22日営業開始
所属車両数:全196両
現在の編成:4両×19編成76両、6両×12編成72両、8両×1編成8両、10両×4編成40両

2600型(現在は廃車)の改造車両でVVVFインバータの試験を行っていた小田急は、この試験において以降の車両のVVVFインバータ投入を本格的に進めることとなった。
その最初の形式がこの小田急1000形になる。
最初の登場は6両編成と4両編成が1編成づつだと思ったので10両。
当初は小田急線内での運転のみだったが、2年後の平成2年に千代田線直通運用に入った。
元々千代田線直通の9000型の置き換えも対象としていた車両でもあった。


後に小田急では意外にもこの1000形で初めて登場した、20m車両の10両貫通編成も登場しており、6+4の10両編成と一緒に長らく千代田線直通に当たっていたが、2007年の2代目4000形の登場によりその運用は10両貫通編成のみとなった。
2代目4000形は今後も増備が続く予定で、いずれは1000形の地下鉄直通運用はなくなる見込み。
というより、もう入ってないかな。
おりしも、小田急の急行列車の全区間10両編成運転が始まったので、地上運用で活躍することとなっている。


1000形にはワイドドア車両も存在する。
1000形登場時期の小田急はいまだに都内が複線で、混雑が非常に激しくなっていた時期。
それの対策として平成2年から一部車両にワイドドアを採用している。
なお、ワイドドア車両は原則として地下鉄には入らない。


現在196両の陣容だが、事故等含めて廃車は出ていない。


3番目:東京急行9000系

第1編成営業開始日:1986年(昭和61年)3月9日営業開始
所属車両数:111両
現在の編成:8両×12編成96両(元住吉)、5両×3編成15両(長津田)

東急旧6000系で試験していたVVVF化技術を本格的に導入することとなった。
その最初の車両がこの9000系である。
東急初の本格的VVVF搭載の量産車両である。
当時は21世紀を担う新しい東急の顔として、東横線に集中的に配置された。
東横線には全部で8両×14編成が配置され、当時東横線を走っていた8500系田園都市線に移籍させ、8090系を組成変更し大井町線に転属。
大井町線を走っていた7000系(初代)、7200系が池上線と目蒲線に転属して、3000系と5000系(初代)を淘汰することとなる。


東横線14編成投入中に大井町線向けの5両編成も一本投入され、総数は117両になった。
しかし、2008年と2009年に東横線9000系がそれぞれ一本づつ5両編成に組成変更され、大井町線へ転属した。
現在大井町線には元から1った1編成を含めて3編成が運用に入っている。
なお、この2本を組成変更する際に3両が抜かれ合計6両が休車となったが、結局そのまま廃車され9000系の初の廃車となった。
現在は111両残っている。


2番目:新京成電鉄8800形

第1編成営業開始日:1986年(昭和61年)2月26日営業開始
所属車両数:96両
現在の編成:8両×9編成72両、6両×3編成18両

世界初の本格的長編製架線集電直流1500V一般高速粘着鉄道用車両となった実は歴史的にものすごい車両ww
当然、関東では一番古い一般高速鉄道VVVFインバータ搭載量産車両ということになる。


現在でも新京成では一番車両数が多い主力で、8両編成12本が登場した。
VVVF搭載一般鉄道は当時は非常にめずらしく、テレビにもとりあげられたこともあるとか。


京成電鉄千葉線との直通運転に際し、3編成が8両編成⇒6両編成の組成変更を受けているが、合計6両の抜き取られた中間車両の処遇は不明。


1番目:西武鉄道8500系

第1編成営業開始日:1985年(昭和60年)4月25日営業開始
所属車両数:12両
現在の編成:4両×3編成12

日本初の新交通システムVVVF採用と同時に、関東の鉄道では始めての量産仕様車でのVVVF採用となった車両である。
1894年にそれまで軽便鉄道として運行していた通称『おとぎ電車』の施設などが経年劣化のため、車体を含め更新する必要に迫られた。
そこで、西武鉄道はこのおとぎ電車を新交通システムとして大幅改修し、新たに作り直したのが現在『愛称レオライナー』で利用されている現在の山口線である。
開業は1985年。
この8500系レオライナー開業と同時に投入された。
ぜんぶっで12両だが、一応量産仕様ww
ちなみに関東初の本格的量産VVVF車両でもあるが、西武鉄道でも試作車含めてはじめてのVVVFであった。
ちなみに西武鉄道の一般鉄道線のVVVF車両は、1994年の6000系登場まで待たないといけない。



以上が、今回旅した車両めぐりです。
また、次もなにかテーマを持って旅ができたらなぁとか思っています。


テーマに沿ったたびの記録

・はみ出し電車の旅(関東編)

*1:今の6000系とは違って、現在弘南鉄道にある車両

*2:上田交通の譲渡に伴い、4両が上田交通へ、2両が廃車になっている

*3:Wikiより